大沢好幸 - ユンボー
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はるか昔にバラエティ番組で披露されたピンクレディーのUFOの替え歌「ユンボー」である。
この替え歌の言葉選びとパフォーマンスの秀逸さに突き動かされ、久しぶりに突然曲紹介を書きたくなった。
まずは歌詞を見てみよう。
ユンボー
レバー握って動かすだけで
崩れ落ちる家屋が見れる
シャベルでやるより早く
いつでもラジオが聞ける
解体作業に欠かせぬユンボー
信じられない 事件が起きたの
もしかしたら 壊したのは 隣の家かも
クビでもいいわ 近頃すこし
練馬の現場に 飽きたところよ
ユンボー
掴みとなる一節目(レバー握って…)ではユンボーの機能を端的かつユーモラスに表現している。 特に「崩れ落ちる家屋が見れる」という表現は秀逸である。 ユンボーを動かすことで家屋を崩すのではなく、「崩れ落ちる家屋が見れる」のだ。 能動的に動かしているというよりは、ユンボーを動かした結果として家屋が崩れ落ちるのが見える。 仕事としてやっている受動感、あるいはユンボーを動かすことが目的であって家屋は勝手に崩れているだけという感覚を見事に表現している。 単に元の歌詞「愛し合える話も出来る」との対応を取っているだけではなく、このようなメッセージを伝えている点で秀逸である。
二節目(シャベルでやるより…)の冒頭はまず「シャベルでやるより早い」という明らか過ぎていささかパンチの弱い長所を挙げている。 これが次に続く「いつでもラジオが聞ける」という独特の着眼点に基づく主張への強烈な前振りになっている。 もしここで二つとも独特な長所を挙げていれば「いつでもラジオが聞ける」という表現が薄まっていただろう。 かといって「シャベルでやるより早い」という表現も、ユンボーの効率性をあえて「シャベル」というしょぼい対象を持ち出して表現するあたりが絶妙である。 「解体作業に欠かせぬユンボー」は、実利的な面に加え「ラジオという娯楽があるおかげで仕事(作業)もなんとかやっていける」ということを端的に表現していると言える。
三節目(信じられない…)は言うまでもなくこの替え歌のハイライトである。 一節二節とジャブを打ったところでここに持っていくという流れが非常にうまい。 四節目(クビでもいいわ…)は元の歌詞との対応関係が最も取れており替え歌としての完成度が高い。 その中でも「練馬」というワードチョイスは驚嘆に値する。 ものすごく地味な街であることは明らかであり、誰もがそりゃ飽きるわ!と共感してしまうだろう1。 「飽きたからいいって話じゃないだろ!」という当たり前のツッコミもあるわけだが、「確かに飽きる」という前提が共有されているのといないのとでは味わいが大きく異なる。
このように、全体としてとにかく無駄のない洗練された歌詞なのだが、歌詞だけではなく大沢さんのパフォーマンスにも注目したい。 まずど頭の「ユンボー」のタイミングと発声は並大抵ではない。 これだけで笑わせるのは相当な才能の持ち主である。 歌うときの微動だにしない感じ、対してユンボーを操作する動きはそこから予期できないほどキレが良い。 歌声のぼんやりとした感じは常にどこか狂気を孕んでおり、確かに隣の家を壊しそうな雰囲気を醸し出している。 何より最後の「ユンボー」のタイミングは冒頭よりも遥かに難しいのだが、完璧な発声である。
これほどまで完成度の高いパフォーマンスは珍しい。 オリジナルであろうと替え歌であろうと良いものは良いということだ。
練馬区民の皆さん、ごめんなさい。 ↩
