EMNLP2025と中国蘇州の印象
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先日、中国の蘇州で開催された EMNLP2025 を聴講しに行った。 EMNLP には音声系の研究がそれなりに見受けられること、近くて物価も安いので手軽なこと、興味のあるワークショップ(BabyLM Workshop)が開催されること、が参加を決めた理由である。 また、研究室の中国人留学生が観光案内をしてくれるということもあり(ありがとう!)、とても楽しみであった。
実際に中国に行ってみて実感したが、想像以上に英語が通じない。 空港は流石に大丈夫だったが、ホテルのフロントで「check in」と言ってもまさかの伝わらず、翻訳アプリを通して「What brings you here?」と聞かれてしまった。 スーツケースを持ってパスポートを提示してるんだからチェックインに決まっているでしょう。 こういうこともあったので留学生の存在は本当に心強かった。
会期は11月4日から9日までの6日間だったが、4日は Welcome Reception だけで本会議は5-7日の三日間、残りの二日間はワークショップという形式だった。 あれだけの投稿数がありながら本会議を三日で済ませるのはなかなか強引だと思った。 実際ポスターセッションの数がかなり多く、一周さらっと眺めるだけでかなり大変だった。 発表はというと、RAG や Alignment といった流行りの技術の改善・応用に取り組む研究や、Bias や Hallucination といった LLM の重要な課題にアプローチする研究、LLM を評価・解釈する研究(〇〇が解けるか?系とか、ニューロンを解析する系)が特に目立った。 マルチモーダルモデルで何かする系の研究も多く見受けられた。 自分の興味に刺さる研究は全体の2-3%ほどのもので若干寂しかったが、楽しく有意義な時間が過ごせたと思う。
学会会場の周りは都市部で、異常に背が高くてピカピカしたビルや異常に広い駐車場などが散らばっていた。 恐らく国土が広いので、あまり計画を立てなくてもいろんな施設をどんどん建てられるのだと思う。 それと比較して、日本は国土の大半が険しい山間部でなおかつ地震大国でもあるので計画的に都市を設計しなくてはならず大変だ。 しかし less is more とはよくいったもので、そうやって制約の中でなんとかすることで逆に知恵が育まれている側面もあるのかもしれない、などと考え事をしていた。 また、中国はかなり車・バイク優先の社会で、ぼーっとしていると普通に轢かれそうになる。 たまに平気で信号無視している車がいてあれはどういうことかと中国人学生に聞いたところ、中国では右折(日本で言う左折)は信号の色に関わらずしてしまっても良いらしい。 なるほど、確かにそれは許しても大丈夫なのかもしれない。 でもたまに直進で無視しているような車があった気もしなくもない。 とはいえそこら中に監視カメラがあったので治安は守られているように思った(それもそれでどうなんだ?)。 タクシーもかなり一般的で、呼べばすぐ来る上に日本よりずっと安価だったためとても便利だった。 タクシーといっても業者の車が来るわけではなく、一般人が自分の車で副業的に配車しているような感じだった。 車内を見ると個々人の趣味嗜好が見られて面白いし、中国製含めいろいろな種類の EV に乗れたのも良い体験であった。
会議を終えたあとはおよそ2日ほど蘇州の街を回った。 蘇州は東洋のベニスと呼ばれており、運河の渡し船ツアーなど楽しむことができた。 昆曲という伝統的な歌劇も観ることができた。 内容はあまり分からなかったが、漢詩が土台となっておりネイティブからしても難解らしい。 その難解さゆえに消えかけていたものをギリギリのところで復興した、とのこと。 楽器の音色も声も滑らかで美しく、あまり意味は分からなくとも聞いてるだけで心地良かった。 外食には事欠かず(中国では朝から外食するのが一般的らしい)、日本のおよそ半分ぐらいの額で美味しいものをたくさん食べることができた。 千と千尋に出てきそうな肉塊と、お土産に買った金木犀のお酒がお気に入りである。 雲南のきのこ料理も美味しかった。 それもこれも同伴してくれた中国人留学生達のおかげである。ありがとう。
