Xを閲覧するのをやめた

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自分はXのアカウントを持っていて、ときどき呟くこともあったのですが、先日から閲覧するのをやめることにしました。 端的に言えば、Xの負の側面をはっきりと感じたことが理由です。 全くの無意味だとは思っていないため一応アカウントは残していますが、しばらくはログインもしない予定です。

自分はTwitter時代からこのSNSを使っていて、アカウントを消しては再開することを何度か繰り返していました。 今回のアカウントはほぼほぼ研究用で、主に研究の情報を集めたり研究者と繋がったりする意図で使用していました。 この役割は概ね果たすことができており、論文読み会などのイベント情報をキャッチして実際に参加したり、自身の論文を宣伝した結果FFが増えたりといったことに繋がりました。 それはそれで良いことなのですが、自分にとって見たくない情報も多分に含まれることは確かでした。 例えば、アカデミアに関するネガティブな意見や「研究者はこうあるべき」といった意見、あるいは自分より遥かに優れた実績を残す同世代の人々のポストなどです。 基本的にこういったポストは無視し、自分にとって必要なことを淡々とこなし、自分が良いと思う生き方をしていけば良いのだと常々思ってはいるのですが、 やはり目にしてしまうと全く気にせずにいるのは難しいものです。 とはいっても、こういったポストはただ有害というわけではもちろんなく、研究者として生きていく上での現実を知る上で大いに役立つものですし、 ある程度は参考にして自分の糧としていくべきものでもあります。 そのため、こういった研究関連の見たくないポストは、Xを忌避する材料にはなれど閲覧をやめるきっかけにはなっていませんでした。

閲覧をやめた実際のきっかけは、2024パリ五輪のボルダー課題に関する炎上騒ぎです(炎上、という表現が正しいかは分かりませんが)。 自分はクライミングが趣味なのでパリ五輪のスポーツクライミングには関心を持っていて、リアルタイムで試合を見ていました。 その中で議論を呼んでいたのは女子ボルダーの決勝の第一課題です。 この課題は日本の森選手だけがスタートホールドに手をかけることができずに0点となったものでした。 身長があると有利な課題なので、身長の低い森選手にとっては確かに難しい課題だったと思います。 こういったことは大会ではよくある印象なので自分は特に深く考えず楽しんでいたのですが、X上ではこの第一課題に対して非難の嵐でした。 身長が低い森選手にとって不公平な課題を作るべきではないという意見、さらにはこれは森選手を貶める悪意のあるセットだ(!?)という意見まで見られました。 最初この騒ぎを見たときにはただただ戸惑ってしまいました。 そもそもボルダーという競技は、その性質上他の多くの競技と違い「毎回条件が異なる(=課題が異なる)」という避けられない特色があります。 この特色があってこそボルダーは面白く、各選手が自分の体格や技術を駆使していかに課題を攻略していくかを見るのが醍醐味と言えます。 第三課題なんかはその面白さが顕著で、逆に森選手が激強ムーブで初の完登者となった課題でした。 ちなみに、クライミング解説者の尾川氏も第三課題はむしろ長身の選手にとって不利とのコメントを残されています。

このような見方をすると、第一課題に対する非難はあまりにも短絡的であることが分かってきます。 もちろん上述した醍醐味はあくまで自分の意見ですし、第一課題が低身長の選手にとって不利であることは認めます。 それでもX上ではただ課題を非難するばかりの内容があまりに多く、かなりがっかり来てしまいました。

しかしこの事態をもう少し俯瞰してみると、これらの非難に対してただ憤りを感じるのも違うのではないかと気付きました。 我々経験者からすれば上述の意見も自然と出てきますが、ボルダー未経験の一般大衆からすれば「不公平だ!」という意見が出るのもむしろ自然なことなのでしょう。 「五輪なのだから一般大衆が見ても納得のいくような課題設定にすべき」という意見も少ないながら見られ、それは確かに一理あると思います。 すなわち、よくよく考えてみればこういった非難が起こる理由も分かるし、みんなが不当な理由で非難しているわけではない、ということです。 それでは自分の憤りの真の原因はどこにあったのかと言えば、「一般大衆によって拡散された主張一般」なのだと思います。 「Xでバズるような何らかの主張が実態と乖離している」という事例は腐るほどあると思いますが、 自分は一般大衆と興味の対象がズレていることもあり、バズツイートを見ても「なんだかよく分からんこと言ってるなぁ」ぐらいで済むことがほとんどでした。 しかし今回は自分にとって比較的馴染み深いボルダーに関する一件だったため過敏に反応せざるを得ませんでした。 すなわち、今まで自分の中でぼんやりしていた「SNSの闇」のようなものが急に顕現したため、「こんなものはもう見たくない」という気持ちが一気に押し寄せたのだと思います。 うわ、ここってこんな場所だったんだ!噂には聞いていたが本当に酷い!!みたいな感じです。

今回書いた話は特に目新しいことでもなんでもない今更感のある話だとは思うのですが、 自分にとってはXから距離を置こうと決心できる程度には大きな出来事でした。 実際にはいちいちこんなことを気にしない心を持ってSNSと付き合っていけば良いと思うのですが、 やっぱり見ていて気分の良いものではありませんし(なのになぜか見てしまいがち、意味不明)、最近は目に入る情報が画一化され過ぎている問題もあるので、 平穏な心を取り戻すために閲覧をやめることにしました。 今後はリアルの学会を中心にコミュニティを維持・拡大できるよう行動していきたいと思います。