デスモグレイン

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数ヶ月ほど前から、右足の親指の関節のところに大きな魚の目ができて困っていた。 普段の生活には支障は無いのだが、クライミングシューズを履くと傷んでしまって登れないのである。 クライミングシューズは、出来るだけ小さいものを履くことでつま先での踏み込みがしやすくなって有利になるものである。 しかし、その弊害としてタコや魚の目ができやすくなってしまったり、それが痛みに繋がったりしてしまうわけである。 特に魚の目は角質が皮膚の深くまで侵食することで芯が出来てしまうので、圧迫されると痛みやすい。

こういうのは何科に行けば良いのかよく分からなかったので調べたところ、どうも皮膚科で良いらしいことが分かり、先日早速行ってきた。 事前に調べたところによると、その場で液体窒素で凍らせて一気に剥がすという荒療治が行われることもあるという。 すぐに治るのは嬉しいが、その後当然痛むとのことで、来週クライミングの予定を控えている身としてはやや心配であった。 今回行った病院ではそのような治療が行われることはなく安心した。 処置の内容としては、まず出っぱっている角質を優しいピーラーのような専用の器具で削る(なんと市販されているらしい。世の中にはいろいろな需要がある)。 自分の一部がスルスルと削られていく様子はどこか爽快であった。 その後、「スピール膏」という貼り薬の説明を受ける。 エセドイツ語のようなこの軟膏には角質を柔らかくする作用があるという。

帰宅後、「スピール膏」がやや気になり改めてちょっと調べてみた。 その効果はなかなか絶大のようで、どのWebページにも「必ず患部より小さく切って貼ること」と書いてある。 大きく貼ってしまうと、健康な皮膚が影響を受けて痛んでしまうとのこと。 病院ではそんな説明は受けなかったような気がするし、むしろ気持ち大きめに張る方が安心かな?と考えてしまっていたので、調べておいて良かった。 どういう仕組みで角質に効くのかも気になってさらに調べたところ、スピール膏に含まれる「サリチル酸」という成分が角質と皮膚の間の「デスモグレイン」というタンパク質を溶かす、ということらしい。

デスモグレイン。デスモグレイン。 なんとおぞましい名前であろうか。 RPGであれば、魔族の中でも特に強力なボスの名前であり、ラスボスであってもおかしくない凄みがある。 なんならちょっと調べてみたところダリオン・モグレイン という非常によく似た名前のゲームキャラクターが実在した。 そのビジュアルがこちら。

想像通りどころか、想像を上回っているではないか。 こいつの正体が実際には「タコや魚の目の角質と健康な皮膚との間を繋ぐタンパク質」だなんてちゃんちゃらおかしい。 そしてこれに立ち向かうのが「スピール膏」というのもなんと頼りない。 そもそもタコだの魚の目だの、この業界のネーミングはちょっとお魚の世界観が過ぎるのではなかろうか。 そんな能天気な世界に「デスモグレイン」とはいかがなものか。 「フジツボ」とでも名付けておけばよろしい。 いやはや、ネーミングとはとかく奇妙なものである。