INTERSPEECH2024 参加記・旅行記(その2)
Published:
行程(再掲)。 本記事では学会会期(太字部分)の内容を書くことにする。
- 8/30-31: 移動日(成田 ️→ 上海 → アテネ → コス島)
- 8/31: コス島を少し観光、前泊
- 9/1-5: 学会会期
- 9/6: コス島からアテネへ移動、アテネ観光
- 9/7: アテネ観光
- 9/7-8: 移動日(アテネ → カイロ → 成田)
9/1(日): チュートリアル
会場へ向かう〜チュートリアルに参加
ホテルの朝食会場でアジア人を見かけ声をかけてみるとNTTの方だった。 朝食の後、一緒にローカルバスのバス停へ向かった。 10分ほど乗車し、そこからさらに5分ほど歩くと会場である。 白を基調とした内装で清潔な印象。
ロゴがあったので記念に写真を撮ってもらった。まぶしそうだね。
この日は一日チュートリアルで、午前は「Embracing Inclusivity: Bridging Gaps, Breaking Barriers, and Beyond Challenges in developing real-time embedded conversational AI for assistive technology」に参加した。 初めて海外でアカデミックな話を聞く体験となったが、恐らく一番狭い会場だったためなんだか緊張した。 よりインクルーシブな対話AIを作るためにはどうしたら良いかという話で、なかなか面白かった。 午後は「Recent Advances in Speech Language Models」に参加。 これは自分の専門の内容なのでしっかりと聞いた。 新しい情報が得られたし、現状の課題感も分かり、かなり有意義だったと思う。
チュートリアルの後にSBIの方と知り合ったのだが、ホテルが同じということで一緒にチェックインデスクまで行くことになった。
会場近くのホテルへ
利便性を重視し、会期中は会場すぐそこのホテルを予約していた。 本当にすぐそこで、なんならこのホテルの中に会場があるとも言えるかもしれない。 チェックイン時に部屋への行き方の案内を受けたが、なんだかよく分からない。 とりあえずエレベーターを降りてみると、すぐに巨大なプールが見える。
プールを取り囲むように遊歩道があり、看板に従って進むと二階建のアパート群のようなものが見える。 ↑の写真で言うと、奥の方に見えている赤茶色の屋根がそれである。 どうやらここが客室らしい。おびただしい量の建物があって少しビックリした。 プールにすぐアクセスできることもあり、なんだかリゾートホテル感がある(自分は入らなかったが)。
ちょっと期待して部屋に入ってみると、おや、ちょっと汚い…それに、どこからともなくカビの匂いがする。 ベッドシーツは清潔だが、小さなアリ?が見える。 Wi-Fiもかなり微弱で、繋がらないことも多々あった。 さらに、夜21時くらいになってもプールサイドで謎のDJイベントをやっている。 それでも宿泊費は初日に泊まったホテルの1.5倍以上…。 場所的な利便性は間違いなく一番だが、会期中ずっとここに泊まることを考えるとなかなか険しい気持ちになってしまった。 今更そんなこと言っても仕方ないので頑張って慣れることにする。
残念ながら夕飯は付いていないので、この日は日本から持ってきたスープと米で済ませた。 ミネラルウォーターが5Lほど用意されていたためそこはとても助かった。
9/2(月): 学会1日目
朝食会場はとても広く、そこそこ美味しいと感じた。
いよいよ会議初日。この日はそれほど自分の興味に沿った発表は無かったが、第二言語獲得や音声翻訳など興味深い話を聞くことができた。 一部のセッションでは通常の発表と別にサーベイトークというものがあり、ミニチュートリアルのようなものを聞くことができる。 昼休みは眠くなってしまったので部屋に戻って横になった。 これができるのはこのホテルの良いところである。
夜はオープニングレセプションなるものが企画されていた。 会場は市街地方面で学会の会場から歩くと40分ほどかかってしまうのだが、せっかくなので歩いてみることにした。 海沿いを歩くのは気持ちが良い。 明らかに日本の海とは質が違う。色も波も、砂浜の感じも違う。異国に来たと実感させられる。
レセプションでは海外の人たちがひたすら社交していた。 知り合い含め日本人の姿もチラホラ見えたが、あまり日本人で群れてしまっても仕方ない(彼らとは国内でもいくらでも会える)と思っていたので、頑張ってその辺の外国人と社交してみようと試みた。 しかし、これは失敗に終わったと言わざるを得ない。 自分はそもそもこういう社交の場はあまり得意ではなく、例え国内会議であっても割り込んでいくのは苦手なのに、まして国際会議で無理なのは当然である。 その辺の道端で知らない人に話しかけるのは、存外平気である。しかし、知らないグループに割って入ることはかなり苦手である。そして、集団の中で一人でいる人に声をかけることも、なぜか不思議なくらい出来ない。 悲しいかな、レセプション向きの気質ではないのである。 ときどき参加者に話しかけられて少し会話することはあったが、こちらからコミュニケーションを取りに行くことはついぞ出来なかった。
レセプションはもう少し続きそうだったが、帰りのバスの時間が近づいてきたので帰ることにした。 バスはこの後も数本あったが、一番最初のバスに乗りたかったのである。 バス停には人が数人いて、レセプション会場とは違う落ち着いた雰囲気にほっとした。 ふと、一人で待っている外国人に話しかけてみようという気持ちになった。 「バスを待っているんですか?」と声をかけると、「そうだ」と答えた。 彼はドイツの言語学者で、自分の専門とも少し被っていたため話が弾んだ。 バスの中でも、ホテルに着くまでずっと話をした。 INTERSPEECHの参加者は意外と自然言語そのものへの興味が薄い人が多いのではないかと聞いてみると、同意してくれた。
レセプションはなんとも散々だったが、帰りのバスで心から良い交流ができたので上出来である。 自分にとって忘れられない体験となった。 なんだか元気が出てきて、風呂場で洗濯をして、外に干して、そのままぐっすりと眠った。
9/3(火): 学会二日目
昨晩干した洗濯物がかなり乾いている。 あまりしっかり絞りきれなかったので心配だったがさすが地中海である。 朝8:30からキーノートだったが、ほぼ眠くならないことに気が付く。 だいぶギリシャの時間にも慣れてきたようだ。
この日は自分のポスターセッションの日である。 内容が内容なので他と比べると人気があるとは言えなかったが、2時間のうち7割ぐらいは人がいたような気がする。 いろいろな質問を受け、特にCTC周りの議論は勉強になったと思う。 たまたま前日にCTCの専門家(高城さん)と会話したことが功を奏して、かなりしっかりと質疑・議論ができた(ありがとう!)。
この日はホテルのランチを予約していた(30ユーロもするので毎日は無理)。 朝食と比べてかなり豪華で美味しかった。 この日は節約のために夕食無しで済ませたかったので、はち切れんばかりに食べた。 したがって午後のセッションはめちゃくちゃ眠かった。 でも最後の離散表現のセッションはめちゃくちゃ楽しかった。
ホテルに戻ってからバーでビールを頼むとなぜか無料だった。 宿泊料の高さの理由が今更分かった。もっと早く気が付くべきだった!
9/4(水): 学会三日目
この日は音声処理とNLPを接続する研究や第一言語獲得に関する研究など、面白い発表がいろいろあり充実していた。
夜は近くのホテルでバンケットがあったが、エントランスからして明らかに自分の泊まっているホテルより豪華である。 バンケットをやるぐらいなのでそれなりに良いホテルなのだろう。 初日のレセプションは立食だったが、こちらは円形のテーブルが複数用意されている。 食事は食べきれないほど種類が多く、どれも美味しそうである。 今回はとりあえず席につけばコミュニケーションが始まるはずなのだが、やっぱりオロオロしてしまう。 食事を山盛りにした皿を手に15分くらい彷徨っていると、見るに見かねたホテルのスタッフに「ここ空いてるぞ」と言われた。 情けない…と思いつつ隣の人にご挨拶。 隣はカナダ人とスウェーデン人のペアで、適当に雑談した。 その後にアメリカ人の方がやってきて、ギリシャの観光について話を聞くことができた。 話してみるとみんなめちゃくちゃ優しくてなんだかホッとした。 アメリカ人の方にオススメされたOUZO(ウゾ)というアニス酒を飲んでみたところ、めちゃめちゃ美味しい。 だいぶ強い酒だが、しっかり二杯飲んでしまう。 すっかり上機嫌になってその辺の日本人とも交流しまくった。 良いだけ飲んでふらふらとホテルに戻りベッドに横たわったところで、死ぬほど酔っ払っていることに気が付く。 気合いでシャワーは浴びたものの、頭がグルグルして全然眠れない。 結局朝方5:00ぐらいまで身をよじり続ける謎の夜を過ごしてしまった。
9/5(木): 学会四日目
学会最終日。この日も朝からキーノートだったが、ちゃんと二日酔いでちゃんと寝坊したので朝食を後回しにした。 そのあとの午前セッションは面白い話がいくつかあったが、午後はあまり興味のあるセッションが無かった。 そこで、クロージングまで軽く周囲を散策することに決めた。 ローカルバスに乗って市街地の反対方向に行くとTherma Beachという温泉が湧き出すビーチがあるらしい。 初日にバスを降りたあたりの場所まで歩いてみるが、バス停が見つからない。 このあたりかな?というところに立っているとバスがやってきた。そしてそれはそのまま素通りして、今いるところから100mほど先に停車した。 あそこ!?焦って走り出したが遅かった。そのままバスは出発してしまった。 そしてTherma Beach行きのバスはこれが最終なのであった…
気を取り直してどこか別のところへ行くバスが無いか調べる。 Therma Beachの手前のAg Fokasというビーチまで行くバスは結構あるようだ。 しかし、直近のバスに乗ってしまうとクロージングに間に合わない。 そこで、今は会場の周りを散策して、クロージングのあとにAg Fokasへ行くことにした。 会場のすぐそこにも丘のような場所があったので、そこを登ったら良い景色が見られるのではないかと思った。
丘へと続く脇道へ入ってすぐに異様な音が聞こえてきた。 重たい金属がぶつかり合うような音がいくつも折り重なって聞こえてくる。 おそるおそる歩みを進める。 音がだんだん大きくなってきて、次第に林に囲まれただたっ広い草原が見えてきた。 そこにいたのは、あり得ない数のヤギであった。
夢??
柵もないので平気で道路まで侵食してくる。 立ち上がってその辺の木にしがみついて何かを食べているヤギもいた。 なんだか分からないがきっと近くに大ヤギ主がいるのだろう(それを大ヤギ主と呼ぶかはともかく)。
丘の道は砂埃が立っていて、靴はすっかり白く汚れてしまう。 しかしこのハイキングの決断は大正解で、とても綺麗な景色を見ることができた。 登山同様、頑張って歩いた者の特権である。 コス島はつくづく青と白に映える場所である。ギリシャ国旗がその二色なのも頷ける(ちなみに実際には、青は海を、白は空を意味するらしい。建物や砂浜ではない)。
45分の運動を終え、クロージングに参加。 来年以降のINTERSPEECHの情報などが解禁されていたが、参加はしなくても良かったような気がする。
クロージング後、すぐにAg Fokasへ向かうバスに乗り込む。 今度は乗り場を間違えなかったが、終点で降り損ねてしまい転回場所までやってきてしまう。 そもそもコス島のバスはなぜか何もアナウンスしない。電光掲示板もない。 だから頑張ってGoogle Mapを目で追うしかないのだが、Ag Fokasはバス停の場所がよく分からなかったので降り損ねてしまったのである。 運転手さんに「ごめんね」と言われたが、転回場所は終点からそれほど距離はなく、むしろ小高い丘で景色も良いのでそのまま降ろしてもらった。
Ag Fokasには数軒小さなホテルがあり、あとは特に何も無かった。 丘に続く道があったので登ってみると、野生のヤギと飼われているヤギがいた。 先ほどのようなバカみたいな量ではなく、常識的な量である。 30分ほど適当に散策して帰りのバスに乗り込んだ。
この日だけはホテルで夕食を予約していたので、学会お疲れ様の気持ちでたらふく食べた。 酒も飲みたかったが、昨日の分が残っている実感があったのでビールとジントニックで終わりにした。
かくして学会会期は終了した。 総じてとても楽しい学会であった。 Yossi Adiと時間をとって話せば良かった、それだけがちょっと後悔。 それにしても渡部先生は凄かった。 チュートリアルも座長もパネルディスカッションもサーベイトークも発表者もやっていた。 伝説である。